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東京地方裁判所 昭和49年(借チ)1061号 決定 1975年12月23日

主文

一  申立人が別紙目録(三)記載の増改築をなすことを許可する。

二  申立人と相手方との間の別紙目録(一)記載の土地についての賃貸借の賃料を、本裁判確定の月の翌月分から、月額金六、五七六円に改定する。

三  申立人は相手方に対し金三三万七、〇〇〇円を支払え。

理由

(申立の要旨)

一  申立外木本守治は昭和二八年一月相手方から、その所有の別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という)を非堅固建物所有の目的で賃借し、同地上に同目録(二)記載の建物(以下本件建物という。)を所有していたところ、昭和三六年一一月三〇日同人が死亡し、申立人が右木本守治の地位を相続し、右土地賃借権及び建物所有権を取得した。

二  申立人は本件建物を取こわし、その跡地に同目録(三)記載の建物を新築したい。前記賃貸借契約には増改築禁止の特約は存しないが、相手方はこれが存在すると主張し、右増改築を承諾しないので賃貸人の承諾に代る許可の裁判を求める。

(当裁判所の判断)

一本件の資料によれば、申立の要旨一、記載の事実を認めることができる。相手方は本件賃借権は一時使用の為設定したことが明らかな場合である旨主張するけれども、これを認めるに足る資料はない。又本件賃貸借契約には借地人が地上建物の増改築をする場合には、地主の承諾を要する旨の特約が存していたこと、本件改築は土地の利用上相当であることが本件資料により認められるので、本件申立は認容すべきである。

二附随処分

本件増改築により、申立人は本件土地につき従前より有効かつ、安定した利用をなし得るという利益をうけ、その反面相手方は賃貸借が事実上長期化する不利益を免れないから、本件申立を認容するに当つては、当事者間の利益の衡平を図るため、申立人に財産上の給付を命ずるとともに、地代を改定するのが相当である。

右財産上の給付について鑑定委員会は、本件土地の更地価格を金一、一二三万七、〇〇〇円(3.3平方メートル当り金四三万五、〇〇〇円)、借地権価格をその七割相当額とした上、本件増改築承諾料相当額として金三三万七、〇〇〇円(更地価格の三パーセント)をもつて給付額とする意見書を提出した。而して、本件増改築が普通木造住宅の新築工事と同様で全面改築であること、及び従来の裁判例に徴し、右給付額は相当であると認める。

地代については鑑定委員会の意見に従い、本裁判確定の月の翌月分から月額金六、五七六円(3.3平方メートルに当り金二二五円)に改める。

よつて、主文のとおり決定する。

(中島恒)

<別紙目録(一)(二)(三)省略>

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